2012年9月27日木曜日

せっかくの玉原に行ける日なのに・・・・・


 せっかく玉原へ行ける日なのに朝から雨です。そのためザックのパッキングに気持ちが入りません。ツキノワグマの行動も気になりますし、「今日行かなければ、後悔することがあるかも知れない!」と、思うのですが、雨が音を立てて降ってくるため、気持ちは益々ネガティブになってゆきます。
 
 そこで気持ちを入れ替えて、雨を楽しむことにしました。新しいカメラもあることだから、雨の滴でも撮りに行く事にしようと考えました。
  
 中心広場の縁でオヤマボクチが咲き出しました。アザミに似ていますがゴボウの仲間で、大きな花の直径は5cm程になるキク科の植物で、「御山火口」と書かれ、山に生える火付け材として重宝され、別名「炎取草」とも言われているようです。

 サラシナショウマが滴を溜めています。そしてその中には様々な風景を映しているようでした。ナンブアザミは筒状花に細かな滴を付けています。そしてツルシキミは赤く色づいた実に。

 全ての者達が雨にしっとりと濡れています。アップ画像で見ますと、それは和菓子の葛に包まれている様子で、そのためカメラ達はフォーカスに苦戦をしています。水の膜が着いているためにピントが合いにくくなっているのでしょう?

 キノコ達の姿も見ることが出来ました。ここのところ雨が少なかったために、キノコにも恵みの雨だった様子です。いつも通り、いつもの所でハナビラタケの大きな株に出会いました。このキノコを食した事がありますが、コリコリとした歯触りで、悪くないキノコでした。次ぎにアブラシメジモドキです。このキノコは食用とされていますが、それほど美味しいキノコではありませんでした。

 悪臭を放つヒメスッポンタケにも会えました。頭部のグレバに胞子が含まれていて、訪れた蝿達によって運ばれるのです。このキノコも食用らしいのですが、ちょっと手が出せません。
 木道の杭からナラタケが出ています。良い出汁がでる秋を代表するキノコですが、そろそろ大発生の予感がします。しかしここは除染地域になっています。セシウムの含有が心配されるところです。
 
 湿原が秋色となってきました。ヤマトリカブトは大きな滴を着け、アキノキリンソウは小さな花に可愛い滴を飾っていました。
 遊歩道脇ではアクシバの実が赤くなり、滴を溜めた姿は果物のシロップ漬けを想像させました。
 オヤマボクチ
 サラシナショウマ
 ナンブアザミ
 ツルシキミ
 ハナビラタケ
 ムラサキアブラシメジモドキ
 ヒメスッポンタケ
 ナラタケ
 ヤマトリカブト
 アキノキリンソウ
 アクシバ

2012年9月13日木曜日

コンパクトカメラでの映像です。

 私のカメラは、仲間から提供されましたCanon EOS 40Dを常用していますが、別の仲間がフェイスブックに投稿しました画像に刺激され、コンパクト・デジタルカメラを購入してしまいました。今回はそのカメラを持っての入山でした。
 アキノギンリョウソウが首を持ち上げ始めました。梅雨時のギンリョウソウと比べると、色にブルーが差しおしゃれな花です。
 環境センターに向かう沢すじでは、サラシナショウマが盛りになっています。白い小さな花の集まりの花穂は30cmを越えるでしょうか、風に揺れています。
 調整池を見るだけでは、秋の気配は無く夏の気配ですが、周辺の花達は初秋を彩る者達ばかりとなってきました。
 アケボノソウが咲き出しました。リンドウの仲間で、花の中央を朝日と見立て、「朝日が昇りました。そして山の向こうには、まだ星が残っています。」そんな意味の花なのです。「曙草」名前を付けた人に拍手を送りたいです。
 湿原はアキノキリンソウが盛りです。そして足下では、トンボのアカネ属ではいちばん小さなヒメアカネが飛び交っています。このトンボは、湿原に霜が降りる頃まで生活し一生を終えるのです。
 林縁では日本固有種のミヤマシグレの実が赤く主張をしています。眼を下ろすとショッキングピンクの面白い形をしたキノコが確認できます。それはスッポンタケの仲間のキツネのエフデと呼ばれるキノコだそうで、悪臭を放ち、蝿達によって胞子を運んで貰う、特殊な生活をしているキノコでした。その後アケボノシュスランに遭遇、繻子の名を持つこのランは別名ビロードランとも言われています。
 ブナの幹でザトウムシが動きます。マメに針金を付けたような蜘蛛に見える形をしていますが、系統的にはサソリに近い種なのだそうです。私は子ども達には「ブナの森の釜爺」と紹介しています。「釜爺」とは千と千尋の神隠しの中に出てくるキャラクターです。そうすると子ども達は、いやがりもせず手を出してくるのです。
 ニホンミツバチとキイロスズメバチの騒動はどうなったのでしょう?気になり、再度訪ねましたが本日もまた抗争が繰り返されていました。と言うことは、まだ持ちこたえていたのです。頑張れニホンミツバチ!! ん!この考えってナチュラリストとしてはいけない考えですね


 アキノギンリョウソウ
サラシナショウマ
アケボノソウ
アケボノソウ(アップ)
アキノキリンソウ
ヒメアカネ♀
ミヤマシグレ
キツネノエフデ(キノコ)
アケボノシュシュラン
ザトウムシ
キイロスズメバチ

2012年9月6日木曜日

2週間ぶりのたんばらは?

 湿原はタムラソウが盛りです。一見アザミに見えますが、葉には刺がありませんので、触っても痛くありません。この花をセスジツユムシが大好きなのです。食べられることによって、花はみすぼらしくなってしまうのですが、多くのセスジツユムシを見ることが出来ました。
 足下ではウメバチソウが見られます。歴史に名高い「前田家」と我が家の家紋がウメバチです。しかも我が家は縁なしのウメバチですので、正にそのままが我が家の家紋なのです。この花は湿原が草紅葉になる頃まで咲いてくれるのです。
 湿原を巡回中に異変を感じました。ミズバショウの葉が無いのです。ミズバショウが生育していた箇所が抜けていて、空間が出来ているのです。泥炭から出ている部分が食べられて全てありません。これはホンシュウジカによるものと考えられます。7月頃から鹿による食痕が目立っていたのですが、ここまで食害が進むと思っていませんでした。これから対策を考えないと観光的にもダメージが大きくなるかも知れません。
 遊歩道の縁では日本固有種のマルバフユイチゴ実が赤く熟しきれいです。緑の葉に赤い実、色合いが反対色なので目立ちます。獣たちに「食べて!」っと主張し、食された後、排泄される事によって種が移動できるのです。(ナイス!戦略!!)
 ブナ平では、ブナの古木が途中でえぐられています。側によって確認するとツキノワグマの爪痕が残されています。どうやらその中に潜んでいた、甲虫の幼虫をあさった様子です。例年ならば、この時季はウワミズザクラの実を食しているはずですが、本年は凶作です。熊達も餌探しに必死なのでしょう。
 群馬県評価:絶滅危惧第類のニホンミツバチの巣穴でも、異変が起きていました。そこに天敵であるキイロスズメバチが2匹来ていたのです。巣穴入り口には多くのニホンミツバチが集結し、威嚇行動をし攻撃に備えていました。ここは昨年の初冬にやはりキイロスズメバチによって全滅させられているのです。ニホンミツバチのために、我々がスズメバチを叩き落とせば問題は無いのですが、それは生態系に反すること、じっと見つめるだけでした。
 玉原がざわついています。環境センターに戻る途中でヤブ陰に隠れていたクサボタンを見つけ、また帰路には群馬県評価:絶滅危惧種B類のミヤマウズラに出会え、我々は少し癒されましたが、来る冬に向かって獣たちは必死なのかも知れません。


タムラソウに群るセスジツユムシ
ウメバチソウ
ニホンシカの食害にあったミズバショウ
マルバフユイチゴ
ツキノワグマのフィールドサイン
ニホンミツバチ
キイロスズメバチ
ヤマトリカブト
クサボタン
ミヤマウズラ

2012年8月21日火曜日

秋の気配が・・・

 午前中はブナ平方向を巡視です。先週までのブナアオシャチホコの活動は落ち着いた様子で、遊歩道で一個体も幼虫が落ちているのを確認しませんでした。蛹化した様子ですが、見上げると幼虫の食痕で葉の重なりが余り感じらず、森が明るく感じられました。

  根元を見ると、細長いナメクジのような物体がゆっくりと動いています。しかも頭が扇型をしています。日本髪の髪飾りに似ているところからコウガイ(笄)ビルと言われている動物です。動物の血を吸う「ヒル」とは分類上違う生物らしいのですが、ここの個体は頭部と体の色合いが違っているために、過去に自然史博物館へ問い合わせをした経緯もあるのです。しかし答えは「コウガイビルです!!」でした。

 毒キノコの代表格のテングタケの仲間のタマゴタケが発生しています。白い卵の殻から発生し、オレンジ色の傘にささくれ立った軸、これぞ毒キノコといった姿ですが、ヨーロッパでは「シーザー」の名前を持つ優秀な食用菌なのです。しかし本年はセシウムの含有が心配されます。気をつけましょう!

 立ち枯れた大木の根元でトンビマイタケを確認です。このキノコも幼菌の時ならやわらかく食用に適しているのですが、このようにきれいな姿を確認するのは初めてでした。ダム開発から40年以上立っています。玉原の情報やデータを残そうと活動していますが、前述のコウガイビル等、画像に残されていない者達がまだまだたくさんあります。

 湿原ではヤマトリカブトや白馬で命名された同じ仲間のハクバブシが咲き、タムラソウも咲き出しました。そして数は少ないのですがエゾリンドウも咲きだし、色合いが何となく「秋」を感じさせます。

 環境センターで昼食を取っていると、ウサギコウモリが迷惑そうに警戒を始めました。そのため環境センターをウサギコウモリに明け渡し、ゲレンデ方向で渡りをする蝶のアサギマダラの確認に出かけることにしました。

 ゲレンデはアサギマダラの好物のヨツバヒヨドリが満開です。そこで十数頭のアサギマダラを確認することが出来ました。アサギマダラは5月の末から6月にかけて南方(沖縄方向)より飛来し、ここにあるガガイモ科のイケマに産卵をするのですが、その子ども達が現在フワ~フワ~っと緩やかに飛び、ヨツバヒヨドリで吸蜜しているのです。そして今月末から南方へ移動を開始し玉原から姿を消すのです。


ウサギコウモリ

 コウガイヒル
 タマゴタケ
 トンビマイタケ
 ヤマトリカブト
 タムラソウ
 エゾリンドウ
アサギマダラ

2012年8月15日水曜日

8月月例観察会より

 上り坂の法面でエビガライチゴが、たわわに熟しています。一粒摘んで口に含むと、甘さの中にさわやかな酸味が広がります。「美味い!!」自然のパワーを戴いた気分でした。 本日は月例観察会です。どのような出会いがあるのでしょうか?
 

 キツリフネが昨晩の雨の名残でしっとりと濡れ、水滴が朝日に輝いています。そしてツリフネソウも既に咲き始めていました。玉原湿原には、尾瀬で発見され命名された群馬県:準絶滅危惧種のオゼヌマアザミがあるのです。尾瀬地域にはもちろんですが、なぜか武尊山系のここにだけあるのです。この花の存在を確認したくて早朝に人目を避けて、公開されていない湿原に踏み込みました。
 

 湿原の縁ではツツジの仲間のホツツジが盛りです。そしてオゼミズギクも咲きだし、その上で若いカンタンでしょうか花粉を食べています。オゼヌマアザミは咲いていました。他のアザミ達と比べて長い総包片を持っているのが特徴です。オゼヌマアザミの画像を撮っている側をトンボが飛び立ちました。ヒメアカネ()です。アカネ属の中でいちばん小さなトンボですが既に羽化をしているようでした。
 

 武尊山系では、本年ブナを食草とするブナアオシャチホコの異常発生が伝えられてきています「糞が雨のように落ちてくる!」とか、立ち寄ったペンションでは「幼虫がブナを食べる音が聞こえるくらいで、異常です!」とも・・・その事例の確認を含めての巡視です。
 

 コイチヨウランの開花を確認です。暗紫色の小さな葉から花茎を持ち上げて3~5mmの小さな花を付けます。コイチヨウランの群落場所は解っているのに、目立たない花のために確認に苦戦です。そのため当然入山なさる方々には気がついて貰えないのでしょう。ツツジの仲間のアクシバも咲いています。これもまた1cm程の小さな花ですが、色合いと言い、花弁をカールした形など自然の造形美と言うのでしょうか、大好きな花なのですが、これもまた気がつく入山者が少ないのです。
 

 その後、ダム直下へ移動です。そこではミヤマカラスアゲハがしみ出てきた湧き水を吸い、ミネラル分を吸収後、尻から排泄する「吸い戻し」行動に集中しています。こんな時は邪魔をしないようにそっと近づけば画像撮影も許してくれるのです。 

 エビガライチゴ
 キツリフネソウ
 ツリフネソウ
 オゼヌマアザミ
 ホツツジ
 オゼミズギクとカンタン
 ヒメアカネ(♀)
 ブナアオシャチホコ
 コイチョウラン
 アクシバ
ミヤマカラスアゲハ